庭仕事疲れで縁側代わりのベンチに座っていたら、
じゅわじゅわじゅわじゅわじゅわじゅわ・・・
と幽かだが聞き覚えのある音が近くから聞こえてくる。
近くといっても庭の中ではなく近所のどこかからだが、
しかし、まさかいまごろツクツクが、と思う。
でも、そうではないとしたら異様な音だ。
道路工事かで何か液体・・・溶剤でも使った作業をと
思ったが、近所でそんな工事の様子もうかがえない。
何の音かもう少し耳を澄ませて聴いていると・・・。
なんと、満を持してやはりツクツクボウシが鳴き始めた。
しかし、なんというかぼそい、いまにも死にそうな弱々しい声だろうか。
やっとの思いで1題目を歌い終えて、声はそれっきり途絶えた。
10月に入ってからセミの声を聞くのはこれが初めて。
しかも、もう6日である。いくらなんでも遅いではないか。
このところ関東は急に低温になって
羽化する時期を逸したからかも知れないがそれにしても遅すぎる。
まあ、ツクツクは夏の終わりのセミではあるが、
地上に出るべきところに建物でも立ってしまって、
1ヵ月ほど彷徨って精も根も使い果たしたのかも知れない。
哀れなセミだが、さらに気の毒なのは、
いくら鳴いても、こんな時期ではメスはおろか
仲間はもうだれもいないだろう。
子孫を遺すだけがミッションで永年の地中暮らしをし、
やっと這い出てきてこれでは、あまりにも可哀想だ。
簡単に捕まえられるミンミンゼミといい、
何か自然は昔とは少しずつ変化してきているのかも知れない。