狸囃子の原点とも言える「本所七不思議」が載っているという
岡崎柾男著の「両国・錦糸町むかし話」。
中古でしかもう手に入らない本なのだろうか、
amazonのマーケットプレイスで先日、見つけて注文した。
読んでみるとその本所七不思議にも出典があり、
「武江年表」(ぶこうねんぴょう)という本に
「本所のばけ太鼓」として出ているという。
ぶこうとは武蔵国の江戸という意味である。
「武江年表」を調べてみると、
それは徳川幕府為政下の江戸の地理、風俗、巷談、異聞など
百般にわたる見聞記という。
斎藤月岑(げっしん)という人物の著作で、
江戸時代の考証・研究に欠かせないものという。
今井金吾という方が校訂した文庫本が筑摩書房から出ている。
素晴らしい本らしいので
これも上中下のうちとりあえず上巻だけ買ってみた。
わたしは気に入った本があると
一気に全巻、購入してしまうことが多いのだが、今回は上巻だけとした。
というのは、狸囃子の記述が
3巻のうちどの巻に記載されているかわからないことと、
岡崎柾男氏がもうひとつ、これまた興味深い「甲子夜話」(かっしやわ)
という本も紹介していたからだ。
「甲子夜話」は江戸時代の平戸藩の藩主、松浦静山が書いた、
278巻に及ぶ随筆集である。
これにも静山自らが狸囃子の音を探ろうと家臣に調べさせたことが
記述されているのである。
この本も電子書籍で手に入れることができるのだが
なんといっても大部で全6巻。そのひとつが奇しくも、
「武江年表」1巻の値段と同じ1,470円である。
そして、これもどの巻に「狸囃子」が記載されているか不明である。
全部そろえるには1,470円×(3+6)=13,230円も必要で、
さらにわたしは別にいま、1万円もする図鑑を2冊買いたいなあ、
と思っているところである。
その上、新しいパソコンも欲しい、と何かとたいへんなのである。
しかしながら、推理小説や雑誌以外のこういった史料本を購入したい
と思うことがこれまであまりなかった。
昔、勤務先にいた女性のご主人が蔵書を売却しようとしたとき、
高く売れる本というのは
彼女が見て何の興味もない「がらくたのような本」ばかりで、
装丁の美しい新刊書や愛好していた文庫本などは
まさに二束三文に評価され、売るのがばかばかしくなったと言っていた。
目利きが値を付ける本というのが、
興味のない人には「がらくたのような本」に見える
「甲子夜話」とか「武江年表」というような史料となる書籍なのだろうと
いまさらながらに思う。
この年になるまでそんな本に興味をもつことがあまりにも少なすぎた。
興味を感ずる才能が希薄だったというしかない。
大学時代、いかにまともに勉強していなかったことだろうか。
もっと早くに、こうした「素朴な疑問」を多く抱いて、
これを調べようとしていればおのずから学問が楽しかっただろうに・・・
と悔やまれる。
しかしながら、いまやっとその片鱗でもわかりかけてきたのはありがたい。
すでに知っていたことだが「武江年表」上巻を少し読み始めると、
オランダ人ヤン・ヨーステンが来日して住んだところから
八重洲の地名が生まれたことなどが記載されている。
出典はこれだったのかととても感慨深いものがある。
懐具合と相談しながら気長に読んでいってみよう。
狸囃子の記述が見つかれば「甲子夜話」の記述と合わせて
「
狸囃子について」の項目で紹介しようと思っている。